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ノーベル経済学賞の理論
"Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness " ノーベル経済学賞受賞者である シカゴ大学教授の Richard H. Thaler さんとハーバード大学ロースクール教授のCass R. Sunsteinさんが著者の本です。
Richard H. Thalerさんは「行動経済学」の研究者であり、本書のテーマである Nudge(ナッジ)は、 人が意思決定する際に自発的な行動をするように物事を仕向けるようにする仕組みです。
Nudge
Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness
Richard H. Thaler
Cass R. Sunstein
本書の表紙のように象の親が子象をそっとひと押しするようなイメージです。
Nudgeの例
作者がナッジ理論の最もわかりやすい例として本書で紹介しているのは、アムステルダのスキポール空港にある、男性用便器に貼られたハエのステッカーです。
これは、ターゲットを狙いたくなると心理を利用して、汚れを拡がらないようにしている例です。
日本のトイレでも、標的のステッカーが貼っていることがありますね。
本書ではこのように人の心理にもとづく習性を経済学を結び付けていきます。
心理と行動
人の心理はその行動に影響を与え、個人の行動が社会に大きく影響を与えます。
- ごみのポイ捨てに困っていたテキサス州では、”Don’t mess with Texas(テキサスを散らかさないで)"というスローガンをハイウェイに掲げました。
- またテキサス州に関係のある有名人、テキサス州の旗を使ったポスターを利用することで人々の心理をNudgeし、ポイ捨てを減らすことに成功しました。
Texan(テキサス人)のプライドをうまく利用しています。
自動選択システム
選択肢を与えることは、人の行動を良い方向にうながすことができます。
これを作者はChoice Architectureとよび、以下のような例があります。
- 学校のカフェテリアで健康的な食事を目線の位置に、ジャンクフードを取りにくい場所に置くことで、選択肢をなくさずに健康的な食事をとるように仕向けることができる。
- 年金プランにデフォルトの設定を行うことで、選択する負荷をなくす仕組みにすることで加盟率を上げることができた。
- 運転免許証を更新する際に臓器のドナーになるかの選択項を記載するようにした。
デフォルト設定があると、めんどくさがり屋さんの助けになりますね。
経済をわかりやすく
Richard H. Thalerさん 作者は依然紹介したポッドキャスト(リンク)を最近登場しました。
All You Need Is Nudge (Ep. 474) - Freakonomics Freakonomics
Thalerさんは合理的でないことが大嫌いな人のようで、最近提出したウェブによる書類提出の仕組みがうまくできていなくて困ったことを例として挙げ、邪魔をするものを”sludge(ぬかるみの泥)” と呼んでいました。
YouTubeでもたくさんの講演を聴くことができます。
なぜクレジットカードの支払い時に差し込む方向選択肢が、裏・表・右・左と4つもあるんかい!と憤っていました。その気持ちわかります。
また、映画”ビッグマネー(原題 THE BIG SHORT)”にカメオ出演し、複雑な金融商品をわかりやすく説明しています。
人の心理と経済学を楽しく学ぶことができる本です。