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THE BOMBER MAFIA:『1万時間の法則』の作者がまとめた飛行機による爆撃の歴史

著者について

『THE BOMBER MAFIA』は2021年に出版された、マルコム・グラッドウェルさんが飛行機による爆撃の開発に携わった"Bomber Mafia"と呼ばれる人々と歴史について記した書籍です。

本書はマルコム・グラッドウェルさんによるPodcast、"Revisionist History”の内容をもとに記されています。

マルコム・グラッドウェルさんの代表的な著作には、『1万時間の法則』について記した”Outliers”があります。

THE BOMBER MAFIA

A Dream, a Temptation, and the Longest Night of the Second World War

Malcolm Gladwell

飛行機による戦闘の歴史

飛行機が戦争に使用され始めたのは第一次世界大戦から、このころは飛行機に布と木材が使用されていた時代、主に偵察活動に使用されており、戦闘といっても拳銃で撃ちあう程度でした。

第二次世界大戦になると、エンジンの高出力化等の進化で飛行距離が格段に伸びたことなどにより、飛行機は有効な兵器という認識が浸透していき、欧州では『バトル・オブ・ブリテン』と呼ばれるドーバー海峡を挟んだ、英国とドイツの戦闘機同士の戦い、ロンドン爆撃が繰り返されました。

そして、1941年12月8日の真珠湾攻撃により航空機の戦力が勝敗を左右することが決定的になりました。

無差別爆撃にいたる過程

連合軍によるドイツや日本に対する爆撃は当初、軍需工場や軍の飛行場を狙った精密爆撃を目標としました。

欧州戦線ではドイツにあるベアリングの工場に何度も爆撃を試みましたが、大きな戦果を挙げることができません。

太平洋戦線においては、サイパンが陥落、そこを拠点として日本本土に爆撃が可能となる最新鋭の爆撃機、B-29が導入されます。

B-29 Superfortress (March Field Air Museumにて撮影)

アジア戦線の司令官であり、第二次世界大戦後の米国空軍の創設にも携わったカーチス・ルメイ大将が率いる米国陸軍航空軍は、目標を中島飛行機(現在のスバル、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)に使用された『栄エンジン』、航空機『隼』などを生産)の工場を目標としました。

栄エンジン搭載で唯一飛行可能なゼロ戦、"61-120"(Planes of Fame Airshowにて撮影)

しかしながら太平洋戦争直後、米軍はその存在を知らなかった、"ジェット気流"により精密爆撃が不可能であることがわかります。

ナパーム

精密爆撃がうまくいかない中の1942年、あるジェル状の物質がハーバード大学の学者によって開発されます。

その名前は”ナパーム”、ベトナム戦争時にジャングルを焼き払うために多用されたことで有名な物質ですが、太平洋戦線において火炎放射器や焼夷弾用に使用され始めました。

そこで米軍は、木と紙でできた日本の家屋をナパームを充填した焼夷弾で攻撃する無差別戦略爆撃を進めていくことになります。

まとめ

本書のオーディオブック版は、Podcastの放送で使用された関係者のインタビュー、音声(プロパガンダ放送の”東京ローズ”や元俳優のレーガン大統領によるニュース映画のナレーション)を聴くことができます。

また、作者はPodcastの取材時に東京大空襲・戦災資料センターを訪れました。

そこで空襲について語る人々が減ってきていることや資料が少ないことを危惧したと語っています。

日本人として深く考えされらる書籍でした。