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はじめに
『ライジング・サン(Rising Sun)』は『ジュラシックパーク』、『アンドロメダ病原体』の作者であるマイケル・クライトンさんが1992年に刊行したサスペンス小説です。
RISING SUN
Michael Crichton
題名からわかるように、1980年代、90年代の日本はその勢いから「日出づる国」という強烈なイメージがありました。
かつての経済超大国
ロサンゼルスを舞台とした本書では、1980年代、90年代にアメリカを席巻した経済大国ニッポンから来た日本人と日本の文化を理解する刑事、まったく理解できず嫌悪する人との摩擦が、殺人事件の捜査を通して描かれています。
本作は映画化され、若手の刑事をウェズリー・スナイプスさん、日本語も話せて日本の文化、日本人の考え方を深く理解する刑事をショーン・コネリーさんが演じています。
本書の雰囲気にショーン・コネリーさんはぴったりはまっていました。
同僚の刑事を『KOU HAI(後輩)』と呼ぶところがいいいですね!
ジャパンマネー、アメリカの魂を買う。
サスペンス小説の要素が大きく締めている本書ですが、『ジュラシック・パーク』の作者で科学技術への造形が深いマイケル・クライトンさんだけあって、当時世界を席巻していた日本の技術力を経済力と絡めて描いています。
例えば、
- 半導体の技術は日本が席巻、アメリカの半導体メーカーは日本の会社がほとんど買い占めている。
- 映像のデジタル化は世界最先端を走っている(映像技術はこの小説の鍵となります。)
- カリフォルニア州にあるジェット推進力研究所(Jet Propulsion Laboratory、JPL)を含めた最先端の研究所は技術者が日本の会社に引き抜かれている。
→ JPLは、火星探査車”オポチュニティー”による火星探査を含め、数多くのプロジェクトを成功させた研究所です。
上記の例はフィクションですが、実際に以下のような事例から”アメリカが買い占められてしまう”、と日本は本当に恐れられていました。
- 1989年:三菱地所によるNYを代表する建物、ロックフェラーセンターの買収
- 1989年:ソニーによるコロンビア映画の買収
- 1990年:松下電器(現パナソニック)によるユニバーサル映画の買収
→ アメリカの”魂”である映画会社の買収は大きな話題となりました。
ジャパンバッシングからジャパンパッシングへ
80年代、90年代によくニュースに登場していた言葉に”ジャパンバッシング”があります。
高性能な家電や日本車が米国でダンピング(不当に安く売られている)と非難され、日本車や家電が衆人環視で壊されるという抗議行動が多く発生しました。
かつてエアショーなどのイベントに登場していた写真のロボザウルスは、ジャパンバッシングの時代は日本車を壊すことで人気だったそうです。
現在のアメリカの脅威は中国、日本は”ジャパンバッシング”ではなく”ジャパンパッシング(Japan Passing)”になってしまいました。
まとめ
『ライジング・サン』を読むことで、日本がアメリカにとっていかに脅威の存在だったことを思い知りました。
日本が脅威であったことは事実ですが、今の日本の凋落ぶりをみるとわざと脅威であることを描き、日本人を油断させるために書いた小説では...と考えてしまいます。