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はじめに
"Anatomy of Greed”はエンロン社の元社員、Brian Cruverさんが2002年に出版した、エンロン社のスキャンダルに関するノンフィクション書籍です。
The Unshredded Truth from an Enron Insider
Anatomy of Greed
Brian Cruver
エンロン社の破綻は経済のみならず、政治的にも大きな影響を与えました。
エンロン社とは
エンロン社はテキサス州ヒューストンにあった会社で操業当初はガス、電力等のエネルギー開発に取り組んでいました。
その後のエネルギーの規制緩和に伴い、次第にエネルギー取引のデリバティブ取引にのめりこんでいきます。
CEOのケネス・レイ、次期社長に任命されてすぐ退職したジェフ・スキリングに率いられたエンロン社は、Fortune誌に"America's Most Innovative Comany"として選ばれ、全米7位の売り上げを誇る会社に成長します。
しかし、1990年代から手に染め始めた不正会計、粉飾決算、ついにはカリフォルニア電力危機時に電気の値段を吊り上げるなどモラルも低下、2001年に破綻に至ります。
破綻は多くの人々の年金(401k)に影響し、多額のボーナスとともに退職した元重役たちは公聴会にて証言を求められます。
破綻への道
エンロン社の破綻に至る過程は、さまざまなサイトで解説されています。
元社員が著者の本書は、あまり語られない破綻後の社員の状態、本社内の状態について記しています。
無茶苦茶ぶり
2000年に全米7位、"America's Most Innovative Comany"に意気揚々に入社した著者ですが、2001年に破綻に見舞われます。
破綻一歩手前のエンロンでは、重要インフラにかかわる企業と思えないほど強欲(Greed)があふれた社員が働き、本社ビルはスターウォーズに例えてDeath Starと社員に呼ばれていました。
また、破綻後もそのいい加減さから、以下のようなエピソードがあったそうです。
- レイオフ後も、2か月ほど給料が振り込まれ続ける。
- 小切手で給料をもらっていた同僚のため、小切手をとりに本社内に入る。
→ レイオフ後も社員カードが有効なので問題なく入ること可能だった。 - 本社駐車場のゲートも通れるので、重役用駐車場に車を停めてみる。
→ 誰にも注意されない。 - 社内メールにもアクセスできるため、レイオフ後も会社の情報を手に入れることができる。
→ オークションサイトでメールの内容をまとめた売ろうとしたが、e-bayから注意されて売れなくなる。 - シュレッダーが毎日フル稼働していた。
最後に
本書はエンロン社の破綻後の混乱について、ユーモアも交えて紹介していますが、この事件以後、以下のような大きな影響を社会に与えました。
・優良会社と思われたエンロン社の株が年金基金(401k)に組み込まれていたため、多くの人の老後資金に影響を与える。
・会計検査会社が粉飾決算に加担していたため、会計監査会社の規制強化、会計基準の厳格化が進む。
本書は各チャプターの初めに、その時の株価が紹介されています。
著者が入社時には80ドルを超えていた株価は、最後には1ドルを切るまでに下落、
企業の"Greed"さが様々な影響を与えることがわかる書籍です。