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クリストファー・ノーラン監督が映画化、”原爆の父”オッペンハイマー博士の伝記をAudibleで聴く

はじめに

"American Prometheus"はKay Bird / Martin J. Sherwin共著の”マンハッタンプロジェクト”を指導し、”原爆の父”と呼ばれた理論物理学者、J. Robert Oppenheimer博士の伝記です。

本書は2005年に出版、2006年にピューリッツァー賞の伝記部門賞を受賞しました。

American Prometheus

Kay Bird and Martin J. Sherwin

Prometheus(プロメテウス)はギリシア神話に登場する神、
天界の火を盗んで人類に与えた存在です。

華麗な経歴

オッペンハイマーは1904年、ニューヨークのドイツ系ユダヤ人移民の家庭に生まれました。

彼の天才ぶりは以下の通りです。

  • ハーバード大学を3年で卒業
  • ケンブリッジ大学に留学
  • ゲッチンゲン大学で博士号取得

博士号取得後、様々な一流大学からスカウトされましたが、以下の大学で教鞭をとります。

  • カリフォルニア大学バークレイ校
  • カリフォルニア工科大学(MITと並ぶ世界屈指の工科大学)

オッペンハイマーは核兵器の開発者として知られていますが、専門はブラックホール等の研究を行う宇宙物理学です。

マンハッタンプロジェクト

米国による原子爆弾の開発は、ナチスによる原爆開発を懸念したレオ・シラード博士を含むユダヤ系物理学者が、アインシュタイン博士の署名入りの書簡をフランクリン・ルーズベルト大統領に信書を送ったことをきっかけにしています。

1938年に巨大なエネルギーを発生させることができる、核分裂反応が発見されます。

兵器の開発は、ドイツ、アメリカ以外に日本も『二号研究』として取り組んでいました。

オッペンハイマーは1942年、ニューメキシコ州ロスアラモスに建設された研究所の所長に指名され、マンハッタンプロジェクトが本格的に始まります。

トリニティ実験

1945年7月16日午前5時過ぎ、ニューメキシコ州の実験場にて”ガジェット”と名付けられた爆弾がさく裂します。

その時、オッペンハイマーはヒンズー教の詩編、『バガヴァット・ギーター』の一節、"我は死なり、世界の破壊者なり”が心に浮かんだと後に述べています。

核爆発による未知のエネルギーにより、地上の大気がすべて発火しまうのでは、と懸念した関係者もいたそうです。

投下の目的は

マンハッタンプロジェクトの目標は”インプロージョン型”爆弾の実用化、トリニティ実験で使用されたものは長崎型原爆と同じ方式となります。

広島型原爆は”ガンバレル(Gun Barrel、銃身)”型と呼ばれた方式で、オッペンハイマーが開発に携わっていたかは不明です。

広島型は起爆テスト無し、輸送時の衝撃で起爆する可能性もあった非常に危険な代物でした。

原爆の使用については、日本近海の海上で爆発させてその破壊力を見せつけることで降伏を迫るという手段も検討されていました。

日本に降伏を迫る以外に、戦後に対立が予想されていたソ連へのけん制も開発の目的があったといわれています。

核兵器反対派に

オッペンハイマー博士は、"原爆の父でありながら、その後核兵器に反対した矛盾だらけの人物”という一行で評価されることがあります。

しかしながら本書により、その矛盾性に到達するまでの人間関係、軋轢、抑圧など、彼を取り巻く複雑な人生について知ることができます。

オッペンハイマーは戦後、共産主義者との関係が問われ、公職を追放されました。
また、FBIから常にマークされていたため、私生活にもついても多くの情報が残っています。

映画化

本書は、2023年に『ダークナイト(バットマン)』、『インセプション』、『インターステラー』等の作品で有名なクリストファー・ノーラン監督によて映画化されました。

日本での公開は繊細なテーマーである事、そしてバーベンハイマーの炎上で公開時期がなかなか決まりませんでしたが、2024年に公開されることになりました。